【連載③】深堀りインタビュー! 3人の青年を招いて~web講演会その後~全3回

令和2年12月22日にYoutube発信した「金沢市ひきこもりを考えるweb講演会」で、以前ひきこもっていた経験がある本人さん3人に自分の体験を語ってもらいyoutubeにアップさせてもらいました。

3回にわたる連載として、新たにインタビュー形式でお話を伺いしています。

今回はその方々にyoutubeで語ってもらったものから、さらにお話いただいた最終回となります。

インタビュアーはつなぐ会花園代表の吉本と、当事者の清水さんがお話を伺いました。

動画はこちらからどうぞ。

第1回はこちらから!
第2回はこちら!

家族にして欲しかったこと

吉本さん

後はお二人に。今思い返してみて家族にこうして欲しかったとかありますか?

Kさん

私は、できたら普通に会話がしたかったかな。
それができてないからわけがわからんくなって、指針が無くなった感じがして、動き出せなくなったのかなという感じはある。
それと、ひきこもっとる時に父親に頭バシーン!って叩かれたんですよ。父親としたら当然ちゃぁ当然じゃないですか、心配しとるし何しとれん!みたいな感じで。でもその瞬間の私は、「あ、もうこいつ敵やな、もう言う事聞かんとこう!」って思った瞬間にもう全く動かんくなったっていう。

吉本さん

親としてなんとかこいつ動かさんといかんと思って、時にはキツイこと言ったり手出たりって話聞くけど、Kさんの場合は逆効果。

Kさん

超逆効果っすね。そこからだいぶひきこもったから。

吉本さん

親の思いって伝わらないよね。伝え方、なんかな。

Kさん

伝わらないですね。

吉本さん

当時お父さんに声掛けしてもらうとしてどんな内容だったら違ったかな。そんなキャラのお父さんじゃないもんね。

Kさん

んー、寡黙で、仕事黙々とやって、帰ってきたら苛々してて、みたいな親やったから(笑)
ただ、私の中では尊敬しとれんて。やっぱり、病気しながらも仕事続けていたし、最後の時までも仕事しとったし、私の前では弱い部分は見せなかったから。
だから、嫌いではないし尊敬もしとる、そういう父親やった。

吉本さん

そういう尊敬できる部分がある親をお父さんにもって、そのことがいい方に影響したことってあるかな。

Kさん

ない!(笑)殴られたし、嫌いになったし、ないけど、『継続は力なり』っていう言葉を貰って、それは多分私に必要なものなんだろうなって。
それは大事にしようかなって思っとる。だからそれだけは私が持っていかんとならんものかなって思っとる。

吉本さん

Sさんはどうですかね。親は県外にいましたが。ひきこもっていた状況は知ってたの?

Sさん

そうですね、一カ月くらい実家に戻って過ごしたりした時もあったと思います。
声掛けはほとんど無くて、たまに連絡があるくらいで。「朝起きて日光に当たって動き出せよ」とか。そもそもひきこもったきっかけが大学在学中にうつになって、その時に自分でしんどくて、ダメだと思って、親に休学したいって言ったんですよ。でも休学はさせてもらえなくて。親からはとにかく大学は出て欲しい。卒業が先やと言われたんですよ。
当時は自分も新卒切符の重さとか知らなかったですし、今からして思えば休学させてもらって、就職浪人とかなんでもいいですけど、就活まともにしたかったなって。
親にもうちょっとそういう知識を知っていて欲しかったなぁって思いますね。

吉本さん

新卒者はそれだけで就職活動に有利だから、もうちょっと頑張ってみんか?というような声掛けの仕方だったら良かった?

Sさん

休学で様子見て、就職活動できそうになるタイミングで卒業できたらと後で思いました。
まぁ、できるかどうかは別ですけど。

吉本さん

情報としてね。

Sさん

そうです。

知っていて欲しかったなぁって。「公務員に向いていると思っていた」とか、後から言われて、なんでその時言わんげんてって(笑)

何も知らんのやぞって思って。

吉本さん

色んな選択肢があるよということや、利益になるような情報が欲しいっていうが1つと、二人に共通しているのは親子の会話が足りてない、もうちょっとやり取りがあったら良かったかな。

まぁ、親からしたら当時の本人達は何を言っても拒否的だったら何も言えなかったかもしれないけど(笑)

秋のじゃがいも掘り!
畑作業は気分転換にもなりますね。

ひきこもっている子どもへの声掛けって難しい!

吉本さん

それでも、もうちょっと声掛けしてくれたらいいかな。
何を言っても反応悪いし。すぐ怒るし苛々しとるし、ちょっとだけ声掛けして後は様子見しとこっていう親が多いと思うんですけど、それがちょうどいいのかどうか。

Kさん

最近になって思うんですけど、怒っとる人ってめっちゃ怖いんですよ、職場で苛々している人を見て、近づきづらい!って思ったんですよ。
それを見て、あ!これを出してたんかって。あぁ、そりゃ近づかんわなって。
だから、無理じゃないですかって。

吉本さん

なかなか、ハードモードのゲームを親がしているみたいな?(笑)
(※ハードモードのゲーム=進めるのが難しい設定のゲーム)

Kさん

ほんとに(笑)

Sさん

いや、無理ゲーですよ無理ゲー(笑)それをやっていたとしたら多分違ったことを口にしていたと思いますし。結構ひきこもっている側もわがままで自分勝手なんですよね、選り好みしているっていうか。
(※無理ゲー=クリアが不可能なゲーム)

本人に聞いてみる

吉本さん

親もある程度自分勝手に接してもいいんかな?そんなキツイことはもちろん言わん方がいいと思うけど。
結構みんな腫れ物に触るように接している。
個別相談の時に親から、「これってどう思いますか?」とか、「これってどう考えているんでしょうか?」って聞かれるんですけど、それは本人に聞いたらって思う時があるんですよ(笑)
当然聞けないから、自分(支援者)に聞いてくるということは分かっているんだけど。

Sさん

気を遣われているということは分かるんで、それよりは普通に気を遣わないで話してもらった方がこちらとしても後ろめたさは減るかなっていうのはある。
親も自分の楽しみを見つけて欲しい。
そしたら「あぁ俺はこんな状況やけどちゃんとできてるんやな」って思えるし

吉本さん

じゃあ本人に聞いてみたいことは、聞きづらくてもちょっと頑張って聞いてみるというのはありかな。

親の予測は当たらない・ひきこもりの親1年生

Kさん

だと思う。それと、もう一つ思ったんが、「〇〇じゃないですか?」って親が言うのって大体当たらんなって(笑)

吉本さん

そうやね(笑)

Kさん

私もこの人こういう風に思ってるやろうなって思ったら「違った!全然違った!」みたいなことがあるから。

吉本さん

お母さんが言う、子どもは今こう思っているのでは?という内容は、お母さんの考えでね。
本人さんがどう思っているかはわからないなぁと思うことはありますね。

Sさん

そうそう。多分親御さんが経験したことない状況にいるんで、本当にわかんないと思いますよ。
アドバイスもしてあげられないし、自分の経験の中にも無いから導いてあげられないから、辛いと思いますよ。
なんか子育てのあれみたいですね、子どもと一緒に親が育っていくみたいな。親何年生、ひきこもりの親何年生みたいな(笑)

吉本さん

それは確かにあるねぇ。
わからないから色んな所に相談に行って。
未体験だから、生まれた赤ちゃんを育てるみたいな感じだよね。

ひきこもりに特効薬なんてない

Kさん

そうですね。

解決策も特効薬も無いですしね。

吉本さん

うん。劇的に動くなんてことはなかなか無いし。

Kさん

無いないない。細菌とかだったら薬でぱっと殺せるけど、そんなものじゃないし。

吉本さん

あぁ~確かに。ひきこもりには特効薬って無いからねぇ。

Kさん

そうそうそう(笑)「一発で治りますよ」ってないからねー(笑)だから、その子が成長していくしかないんかなぁ。

後、別の話になるんやけど、ある人から言われたことがあるんですけど、それを理解したのが6年後なんですよ。「あっ!あの人こういうこと言っとったんやー」みたいな。だからすぐに理解できる言葉と、理解したくなくてやっと気づいたのが6年後っていうことがあったから。何がいいか悪いかなんてね、ひきこもっていた時はわからんし。

昔働いていた職場の上司が凄く嫌いでね、3ヵ月で辞めたんですけど、その上司の言葉を今になって理解して。大事やったんかなぁって、でもあいつ嫌いやったなーって思いながら(笑)

吉本さん

後で気づくこともあるねぇ。

では、最後にみなさん、もうちょっとここは聞いてみたいということはありますか?

クリスマス会の様子です。ビンゴ大会もしました。
クリスマス会のケーキ。

第三者の存在

清水さん

親と子の話が出たじゃないですか。最近自分も家族の方とお話することがあるんですけど、親子じゃない、第三者が居てくれた方が良いのかなぁっていう話をしていて、そういうちょっと間をもってくれる人の存在って大事なのかなと思ったんですがどうですか?

Sさん

大事だと思います。
やっぱり親子だと近すぎて感情的になってしまうことがあるので、緩衝材じゃないですけど、感情的にならないで客観的に見てくれる、情報をくれる人っていうのは凄い大事だと思います。

吉本さん

それはこんな居場所にいる人だったり、支援者だったり、親の会の人だったり。

Kさん

そうですね。友達でもいいしね。信頼しとる知り合いでもいいし。

吉本さん

親子じゃない、横から言われたら入りやすいってこともあるよね。

Kさん

ありますね、直で言われたら何こいつ!って思うことも、横から言われたらあぁ~って(笑)

吉本さん

ほんでお互い言い方下手やし(笑)
本人もお母さんもお父さんも(一同爆笑)
その言い方じゃ伝わらんってことも、ちょっと上手いこと言ってあげるってこともあるし。

Sさん

毎日の積み重ねがあって、凄い省略されてぼんっ!って言われるんで。

清水さん

伝え方とか話し方とかのコミュニケーションもそうですけど、そういったことって自分らどこでも学ばないじゃないですか、話し方とかそういうことは。
学校でも学ばないし、わかんないですよね。

Sさん

そうですね。

Kさん

そうそうそう(笑)分かんない分かんない。

清水さん

こんな話し方をしたら相手はこう思うとかわかんないから、だから上手くいかないんですけど、後から自分でちょっと考えてみたらこうなんかなぁ、へぇって感じになることが多かったんですよ。
そういうコミュニケーションのことを知る機会があるといいのかなぁって。

吉本さん

お互いにですね。
親なんかはね、個別相談で自分と話す時、こんなことを伝えたいんやけどって言われた時に、伝え方が気になったら別の言い方を提案することはありますね。
そしたら、「そんな上手くは伝えられないですー」と言われることもあるんですけど(笑)
全部を上手く伝えられなくてもいいから、少しずつ今の言い方で試してみて下さい、ってね、継続で来ている親御さんにはお伝えしています。
本人さんにはあまりそこまでは言わないですけど。
でも例えば仕事をしだして上司とのやり取りに悩みがあるとかだったら、伝え方等一緒に考えることはできますね。
できればやっぱり、支援者としては個別でしっかり話せる人と繋がって欲しいなぁと思いますね。

Kさん

話聞いて思うのは、一度立ち止まってみたらいいんじゃないかなって。
解決するためには進まなきゃ解決しないっていう思いがあると、やっぱりなんか焦って焦って動き回ってしまうげんけど、動いてから回るくらいなら、動かない方がいい、立ち止まって一回見まわそうよっていう。

吉本さん

それでは今日全体の振り返りでもいいし、何か一言お願いします。

12月、日吉ヶ丘町会の方と一緒にコンサートをしました
コンサートの後、美容師さんにカットもしてもらいました

仕事について

Kさん

個人的にSさんに聞きたいんですけど、お仕事ってどうしたらいいんですか?

Sさん

俺も今それ凄い悩んでるんですけど(笑)

Kさん

私は今ちょっと気楽に仕事しとるんですけど、大学も出ておられるし、目線が高いんですよ、だから仕事とか今どんな感じなのかなぁってちょっと聞きたいなって。

Sさん

ひきこもりから出る時に飲食店でバイトを始めて、そこで正社員になったんだけど、辛くて止めて。飲食はバイトまでが良いと思います。
今は雇用保険の受給を受けながら、午前中だけ福祉施設のアルバイトをしてるんですよ。来月からやっと失業保険貰えるんで、それでなんとか。
今までは貯金を食いつぶしてやってきたんですけど。俺はこういう活動をして色んな人にお世話になったんで、支援の方に回りたいなと思って福祉施設に行ったんですけど、今度正規職員の面接があるんでどうですかと声をかけてもらって。それも運だと思うんですけど、正規職員になれたらいいなって。
俺もハローワークでガツガツ応募はできなかったんで、なんとなく流れで来てるんですけど。

吉本さん

バイトからお声がかかって正規職員ってなれたらいいね。
やっぱりアルバイトをしている仕事ぶりを評価されてお声がかかったんでしょうね。

Sさん

そうだと思うんですけど。
飲食は雇っては貰えると思うんですけど、やっぱり体壊しますわ。めちゃくちゃや(笑)

Kさん

体壊したってことですけど、正社員の時どれくらい働いていたんですか?

Sさん

昼12時出勤で、終わるのが夜中1時か2時で、その間休憩を取れないことがざらだし、休みは週に1日で連休になるとそこも営業になって、正月休みもないし、ずっと立ちっぱなしだし。
14時間労働した後に片づけやってみたいな。
バイトも合わせて5年ちょっとかな。正社員になってからは2年でもう無理だなって。別の店舗では朝9時半から開けてランチと夜やって、遅かったら日付変わることもあるし、仕入れも大変で他店舗行ったり買い物行ったり。体が丈夫じゃないと絶対できない。
サイヤ人じゃないと、フィジカルエリートじゃないとやっていけない仕事やと思います。

Kさん

介護の正社員とか意外といいんですね。

Sさん

介護は夜勤とかもあると思いますけど、勤務時間は決まってるでしょうし、飲食のめちゃくちゃな所に比べたら全然いいんじゃないかなぁ。
人間関係とかは実際行ってみないとわからないけど。

Kさん

困ったことがあったら吉本さんとかに相談したりしてるの?

Sさん

そうですねー。面接してもらって。

Kさん

じゃあ大丈夫っすね。

吉本さん

相談してきてくれるから、こうしたらどうかなとか一緒に考えることが出来るよね。

Sさん

凄い頼りましたもん。飲食の仕事辞めた時に福祉系の所、施設見学とか一緒に連れてってくださって。見学とかできたんですよ。

吉本さん

色々行ったねぇ。

Kさん

飲食店から福祉系の仕事に変わったのは何でなんかなぁって。さっきも聞いたけど。

Sさん

飲食店のバイトから正社員になる時から凄い悩んでて、仕事としてひきこもりの支援とかしたいなって思ったんですけど、仕事ですぐに食っていけるのは飲食だったんです。
でも自分に向いてないなって思いながら働いていたんですよ。たまにピアサポーターの仕事があって、こっちの方が無理してないなぁって思って。
それで施設見学させてもらった時に施設長とお話させてもらって。俺経験とか無いんで不安なんですって言ったら、その方が昔ひきこもっていたりとか、当事者としての経験があるんならそれが一番の強みになるんじゃないですかって。他の誰にも持てない部分やからって言われて。それで凄い勇気づけられて。
後は自分の(意地)維持でもないですけど、うつになって、ひきこもりになっていたことは、失ったものっていっぱいあるじゃないですか。

戻ってこないし、今はもう追いつけないけど、なって良かったとは、これから先も言わないと思うんですけど、無駄じゃなかったなという風に言いたい、その意地が半分かな。

Kさん

わかる、そうそうそう。意地はある。意味があるんや!って思いたい。

吉本さん

そろそろ時間になりました。皆さん長い間お疲れ様でした、ありがとうございました。

つなぐ会花園のおうちでインタビューをしました

インタビューを終えて

今回はKさんとSさんの話を中心に、約90分にわたりインタビューをさせてもらいました。
お二人ともとても素直に当時のことや今現在思っていることを語ってくれました。


Mさんはその後就職し、自分のことが少しわかってきて自信が持てたと話していました。
Kさんはその後、新しい人とのつながりを見つけました。
Sさんはその後、福祉施設の正規職員として採用され、現在も働いています。

ひきこもりは百人百様と言いますが、やはりどこか似たような部分はあるかと思います。今回のインタビューが何かの参考になれば幸いです。

3人の語りはyoutubeに載っています。まだ見られていない方はぜひご覧ください。


インタビューを受けてくださったみなさんの動画は、こちらから是非ご覧ください!

この記事を書いた人

よりそうなかま インタビューチーム

「よりそうなかま」掲載団体有志による、インタビューチームです。
相互交流、情報発信を目的として「よりそうなかま」に掲載中の団体を取材して様々な視点でご紹介していきます。