今回ご紹介するのは、摂食障害の当事者の集まりで、支え合う活動を行っている「あかりプロジェクト」さんをご紹介します!
NPO法人あかりプロジェクトは摂食障害からの回復に必要な支えあいを当事者の視点から考え、関係者とともに実現する団体です。
主な活動は摂食障害の自助グループにより支え合い活動、またその中心でもあるウェブサイト「未来蝶ネット」の運営や、自分らしく働ける場所「からこ舎」など、様々な活動をされています。
知ってますか?~摂食障害とは〜
摂食障害とは何か、みなさんご存じでしょうか?
名前は聞いたことがあるとか、何となく知っているという方も多いかと思います。
しかしその名前からくるイメージや印象とは違って、その苦しみの中身を想像することがとても難しい障害かもしれません。
それは「食べること」だけが苦しみの中心ではないということのようです。
摂食障害とは、精神的な苦痛等から、食行動(食べること)に問題が生じ、正常な食事が長期間行えない状態をいいます。近年では、嚥下障害(のみこみづらい)も摂食障害と呼ぶことから、『中枢性摂食異常症』と呼ぶこともあります。(とはいえ、一般的にはやはり摂食障害と呼ばれます)
なお、ストレスやショックから一時的に「食事が喉を通らない」という状態は、摂食障害とは呼びません。
当事者は、数か月から数十年にわたって、症状に悩みます。その間、拒食と過食、そしてその端境期を周期的に移行することもあり、症状が良くなったように見えても精神的には辛くなったり、悪くなったように見えて回復期にあったりと、当事者、家族、支援者も症状に振り回されることで困惑しやすい特性があります。
食行動の問題から、身体には飢餓やカリウム異常など、強いダメージを与える症状が生じることが出てきます。
そのため、まずは身体的治療を必要とする状態になることが多いのですが、生命の危機的な状況を脱した後は、精神的な治療、そしてその後は社会的なケアを行っていかなければ、同じことの繰り返しになる危険性をはらんでいます。この治療については、一人ひとりその背景等にアプローチしながら進めていかなければならず、前述のとおり、周期的な変動を生じることもあるため、厚生労働省では『難治性疾患』(難病)に指定しています。
これらは、健康な女の子がもつ「やせてキレイになりたい」というダイエット願望とは異なります。どちらも女性に圧倒的に多く、若い女性では100人に1~3人くらいの割合で見られるとされています。はじめは拒食症でも、途中から過食症の症状が加わることもあります。
マゼンタリボン運動ウェブサイト〈(一社)愛媛県摂食障害支援機構〉より
摂食障害という名前は聞いたことがありましたが、具体的なことをあまり知りませんでした。
「食行動に問題があるため、身体に強いダメージを与える」とのこと。
栄養を適切に取れないためか、死亡率も精神疾患の中では約5%と最も高いとのことです。
もっと広く知られるべきだと思いました。
当事者の集まりを始めたきっかけ「頑張る方向が逆だった!」
あかりプロジェクトの代表をされている、山口さんにお話を聞きます!
摂食障害の当事者の集まりは、どういったきっかけで始められたんですか??
自分の摂食障害の経験がシンプルにしんどかったからです。
苦しみが楽になったときに分かった事ですが、15年もがいていたやり方が最後に全く逆だとわかったんです。
「それもっと早く知りたかってんけど!」って思ったんです。
「頑張る方向が逆」なんやって、そのことを伝えたい一心で始めました。
頑張る方向が違ったら、それは苦しいですね・・・
具体的にどういったことがしんどかったですか?
やっぱり、食べることに関係する苦しみですか?
実は食べることに関係する苦しみは、表に現れている苦しさの一つに過ぎないんです。
一番しんどいのはコミュニケーションに大きく影響するところです。
自分の存在価値を感じられなくて、他者から評価されたりよく思われたいという思いが強くて、心の深いところ、暖かいつながりを感じられないのが一番の苦しみだと思っています。
摂食障害というと、食べることに関する悩みがメインだと思っていました。
ということは、身体を治療するだけでは回復せず、解決にならないということですね・・・
苦しいときの「頑張る方向が逆」というのは、どういうことですか??
普通の人になろうと頑張っていたんですが、そんなことしなくて良かったということです。
誰かによく思われようとか、自分のことをどう評価するかとか、それを頑張るんじゃなくて、自分のままでいいんだってことが分かって。
だから、雑談とかできなかったんです。
相手からよく思われるかが基準なので・・・
なるほど、雑談するときも相手の評価が気になると、とっても疲れそうですね。
話相手の方は雑談しているときに「目の前の人が自分にどう思われるかばかり考えている」とは思いませんもんね。
大事な話じゃないときや、特に雑談ならなおさらかもしれませんね!
だから、相手は幽霊と話をしてるみたいだったと思いますよ。
頑張る方向が違ったんだって分かってから、自分の中からすごい力が湧いてきて、誰かとつながりたい、外に出たい、社会とつながりたいって思って。
今なら私できる気がするって思ったんです。
それで自分の経験を活かしたい、自分にしかできないことをしたいと思って、活動を始めました。
あかりプロジェクトの活動
【あかりトーク】摂食障害の自助グループ
いわゆる摂食障害の自助グループです。摂食障害と向き合っている仲間で集まって、時間を分けあいながら、いろんな気持ちをわかちあっています。
進行はあかりリカバリーフレンド(摂食障害の経験者、回復への模索に共に取り組む友人のような存在)が行います。話されたことは絶対に外に持ち出さないこ と、他の人が話しているときにはさえぎったり意見したりしないという決まりの元で会を行っています。話したくない気分のときにはパスもOK。途中参加も OK。出入りも自由です。
◆対象:摂食障害の本人※
◆開催日時、場所:金沢、富山、東京、京都会場があります。
◆申込:必要ありません。
◆参加費:会場によって異なります。下記リンクのスケジュールからご確認ください。
※ご家族の方は、家族の集まりもあります。詳しくはHPをご覧ください。
【未来蝶マイページ】気持ちを吐き出すSNS、日記、気持ちの分かち合い
つらい時に駆け込んだり自分とじっくり対話ができる摂食障害本人や経験者のためのSNSサイトで、日記を綴ったり、コメント欄で気持ちのわかちあいをすることができます。
会員登録メンバー以外がページ内を閲覧することはできないようになっており、思いの丈や気持ちを安心して言葉にすることができます。
ページ内ではメンバーの発言に対して批判やアドバイス、分析をしない決まりになっています。あなたの気持ちはあなたの真実。誰にも批判されることなくありのままの気持ちを綴ってみてください。回復をお手伝いする友人のような存在の「リカバリーフレンド」も参加しています。。
摂食障害を経験した仲間たちで集まって「支え合う」ことについて継続的に学びながら支えあい活動を行っています。
◆登録:必要
◆費用:入会費1000円、月額500円
【オンラインあかりトーク】ZOOMでテーマ別に集まり気持ちを分かち合う
進行は研修を受けた摂食障害や生きづらさの経験者が行います。
・話されたことは絶対に外に持ち出さないこと
・他の人の話に批判
・アドバイスや分析をしないこと
・時間をわけあうこと
といったルールを守りあって会を行っています。話したくない気分のときにはパスもOK。途中参加もOK。出入りも自由です。あなたのお気持ちに一番ぴったりな過ごし方でお過ごしください。
◆対象:摂食障害のご本人・経験者、テーマによっては摂食障害以外の生きづらさを抱えた方
◆費用:初回500円、2回目以降1000円、チケット利用で割安になります。
【からこ舎】調子の波があっても働ける職場&居場所
「調子の波があっても働ける職場&居場所」として
メンバーみんなで支えあいながら珈琲を焙煎しています。
初めての人が参加したいなと思った時は、何に参加するのがおすすめですか??
敷居が低いのは、気持ちを日記のようにつづるSNS「未来蝶マイページ」です。
オンラインあかりトークや、リアルで顔を合わすあかりトークもおすすめです。
参加者の感想
それぞれの活動に参加してくださった、みなさんの感想をご紹介します!
ホームページではさらに多くの感想が見れますので、ぜひ一度ご覧ください。
【あかりトーク】
・はじめて自分の想いを分かってもらえたような気がして、わたしはおかしくないんだって心から思えました。
・ひきこもって誰とも話さない日のほうが多い私にとって、ここは大切な居場所です。
・時間のわけあいをつい忘れて話し込んでしまったとき、それだけたくさんのものを抱えてきたんだねって言ってもらえて涙がでてきました。
【未来蝶マイページ】
・同じ悩みを持った方にしかわからないことがあると思うので、皆さんの話を素直に読むことができました。また、皆さんの経験などを聞き、自分と同じ悩みを持っている人、自分よりも大変な思いをしている方などを知って、自分を見つめなおすことができました。プライバシーが守られているので、安心して自分の気持ちを綴ることができました。
【オンラインあかりトーク】
・今まで同じ症状を持つ人に会うことを何となく避けていましたが、オンラインなので思い切って参加してみました。「自分だけじゃない」と感じられるだけでこんなに楽になるなんてびっくりしました。
・顔を伏せたり匿名で参加できるので、リアルの集まりよりも参加しやすかったです。ファシリテーターが安全な場を保ってくださって安心して参加できました。
回復したきっかけ
当事者でもあった山口さんは、あかりプロジェクトを立ち上げたりさまざまな事業を手掛けていらっしゃいますが、どのようにしてここまで回復されていったんですか?
わたしの回復のプロセスは、わたしの中で決定的な瞬間があったと思います。
自分のことが大嫌いなことの底には、人とコミュニケーションがうまくできんってことが実はあって、劣等感というか、どこに居ても浮いてしまう自分とか、仕事が続かん自分とか、その部分がわたしにとって最も恥ずべき部分として底にあったんやけども、そこに気づかずになんとか表面で自分を好きになろうとしてもがいてきた感じ。
それが、ある日突然、そうできん自分はダメだって思っとった部分も、「もういいんや、このままでいいんや!」と思えた時に、わたし例えば一生働かないとしても 別にOKなんや、いろんな手段で食べていけて、生きていればそれでいいんやって。
いま、生きてるやん!って。
もし生きていくのがままならないような状況になったら、それはそのときの自分にお任せしよう、そのときの自分の生命力がちゃんとなんとかしてくれるって。
そういう風に、一番奥のコミュニケーション下手ってところを、それでもいいやって許せた時に、心の中から過食の衝動自体がストーンって無くなったの。
自分を変えようと努力することで回復したのではなくて、「このままでいいんや!」みたいな許せたという感覚が大きかったんですね!
人とのコミュニケーションが息苦しいとか、仕事続かんとか、食べ吐き止まらんとか、何回やってもダメだから、諦めがついたんだと思う。
諦めると聞くとネガティブな印象ですが、「諦める=明らかにする」という言葉もありますね。
「自分を変えなきゃ」というこだわりのせいで自分が苦しんでいた・・・それが明らかになったという感じですね。
こんな自分も全部自分で、もうすべていいって思えるのは、もしかしたら時間がかかることなのかもしれん。
けど、でもね、思い続けとったらその日って来るよね、絶対。
「時間がかかっても、思い続けること」、摂食障害に関わらず生きづらさを抱える多くの人に関わるメッセージな気がします!
ありのままの自分を受け入れるということは、とても難しいことだと思います。
けれど時間がかかっても、ありのままの自分を見つめ続けることが明日の自分につながる気がしました。
最後に
摂食障害の始まりは、人によってさまざまなようです。
生きづらさの一つとして「食べることの苦しさ」が現れているだけであって、どのように摂食障害と付き合っていくかは人それぞれなのが難しさなのだと思いました。
それが容姿へのこだわりとして生きづらさが現れる人がいる一方で、挨拶のように何気なく「太ったね」「やせたね」という会話の始まりをする方も多いかと思います。
その人の外見はその人の人生、家族や親の歴史の現れだともいえると思います。気軽に、挨拶が外見の指摘からスタートしてしまわないよう、気を付けようと思いました。
死亡率が精神疾患の中では約5%と最も高い障害であることからも、容姿を気にする思春期の若者へは、特に気を付けたいですね。
「もういいんや、このままでいいんや!と思えた時に、わたし例えば一生働かないとしても 別にOKなんや、いろんな手段で食べていけて、生きていればそれでいいんやって。」と語る山口さんは、結果として当事者の集まりを作りさまざまな事業を手がけるまでになっています。
そのように生きているだけで良いんだと思えることが、自分以外の人を手助けする力の源になっているんだと思いました!それは摂食障害に関わらず、生きづらさを感じているけれどこのままでもいいんだと思えることが、スタートになるのだと思います。
同じ境遇の仲間と活動をするあかりプロジェクトさんに伺って、とっても元気をもらえた気がします。
お仕事中にお伺いしてお話を聞かせていただきました。ありがとうございました!
連絡先、お問い合わせ
代表:山口いづみ
TEL:076-256-2548
HP:あかりプロジェクト – 未来蝶ネット https://future-butterfly.net/
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